もう一度、重なる手
「アツくんだって、風邪をひいたら困るでしょ」
「俺は平気だよ。体丈夫だし。だけどフミは、小さい頃から風邪ひくと、喉が腫れて熱も出て長引くじゃん」
「それ、小学生のときの話でしょ」
「そうだけど、お客さんをソファーには寝かせられないから」
むっと顔を顰めると、アツくんがふっと笑って私の頭を撫でてきた。
「ほら、早く寝ておいで」
子どもをあやすようなアツくんの声を聞きながら、私はふと十四年前に一緒に暮らしていたときのことを思い出した。
「じゃあ、昔みたいに一緒に寝ない?」
子どものとき、夜中に突然雷が鳴ったり、怖い夢を見たりすると、私はときどきアツくんの部屋に逃げ込んでいた。
窓の外から激しい落雷の音が聞こえてきても、冷や汗が出るほど怖い夢を見ても、アツくんにくっつくと恐怖心が吹き飛んで安心して眠れた。
あの頃みたいに、一緒に寝れば……。
単純にそう考えていたら、アツくんが苦笑いで首を横に振る。