もう一度、重なる手

「昔みたいに寝るのは無理だよ」

「どうして?」 

 断られたことに少しショックを受けていると、アツくんが下がっていた眉尻をさらに下げて困り顔になった。

「フミのこと、大事な妹って思う気持ちは変わらないけど、正直言って、今の俺には昔みたいにフミの隣で呑気に眠れる自信がない」

 困ったように笑うアツくんの言葉が、冗談を言っているようには聞こえなかった。

 それって、どういう意味……?

 アツくんが私に構って世話を焼いてくれるのは、私のことを今も妹として見ていてくれるからだと思っていたけど。そうじゃないの……?

 今の私はアツくんに、少しくらいはひとりの女性として見てもらえてる――?

 ドキドキしながらアツくんを見つめると、彼がメガネを外して私から顔を逸らしてしまう。

 その横顔が、ほんのりと赤くなっているような気がして、私の胸が期待で高鳴った。

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