もう一度、重なる手
テーブルの上には焼きたてのホットサンドが用意されていて、三角に切られた切り口からは、ハムと蕩けたチーズと卵が顔を覗かせている。
熱々のホットサンドに手を伸ばしてひと口齧ると「おいし……」と思わず声が溢れた。
アツくんの作ってくれたホットサンドには、具材と一緒にホワイトソースが挟まれていて。ちょっと感激するくらいにおいしい。
私は朝はあまり食欲が出ないほうなのだけど、このホットサンドはいくらでも食べられそうだった。
「口にあってよかった」
モグモグと夢中で食べていると、アツくんが笑いながらコーヒーを淹れてくれる。
そのコーヒーの味も苦味が強くておいしくて。ひさしぶりに朝から満たされた。
朝食を済ませたあと、着替えて、カバンの中のポーチにあった最低限のメイク道具で化粧をする。
服が昨日と同じなこと、由紀恵さんに変に勘繰られないといいけど。
洗面所の鏡を見ながら考えていると、「俺はあと十五分くらいで出るけどフミは?」と、アツくんがリビングから声をかけてきた。
「私も同じタイミングで出る」
化粧ポーチのファスナーを締めると、それを上から鷲掴んで洗面所を出る。
出勤の準備を整えると、同じタイミングで準備を終えたアツくんが「あ、そうだ」と仕事用のカバンから何かを取り出して渡してきた。