もう一度、重なる手
翔吾くんが、私を殴ったことを後悔しているのは事実なんだろう。
彼自身、それで私が傷付いたことはアツくんに指摘されるまでもなくわかっているはずだ。
「フミのことを大切にしてくれるなら、俺は君とフミの将来に賛成だった。だけど、君にはそれが難しそうだよね。仮にフミが君を許したとしても、俺は一度でもフミを傷付けた人間を信用できないよ」
「は? あんたの信用なんてどうでもいいよ。俺が話したいのは史花だ」
翔吾くんが、アツくんに噛み付くように反論する。
「じゃあ、この場でフミに気持ちを聞いてみたらいいよ。フミはどうしたい?」
アツくんが、背中に隠れていた私を前に押し出して翔吾くんと対峙させようとする。
「でも……」
翔吾くんは私の話をちゃんと聞いてくれるだろうか。
ほんとうの気持ちを言えば、また手を出されるんじゃ……。
小さく唇を震わせていると、アツくんが私の肩に手をのせて耳元に囁いてくる。
「大丈夫。俺がそばについてるから、思ってることをちゃんと話して。フミが彼との関係をどうしたいか」
鼓膜を揺らす優しい声に、気持ちが少し落ち着いた。
大丈夫……。殴られたあのときとは違って、今はアツくんがそばにいてくれる。
私はお腹の辺りで両手をぎゅっと組み合わせると、一歩前に出た。