もう一度、重なる手
「史花、本気で言ってる?」
「本気だよ。やっぱり、どれだけ謝られても殴られたことは許せないし、私は翔吾くんと一緒にいるのが怖い……」
「史花……」
翔吾くんの瞳が、泣き出しそうに揺れる。
「俺は本当に史花のこと好きだった……」
「私も、翔吾くんのこと好きだったから付き合ってたよ」
「だったら……」
「でも、ごめん……、私、どうしても……。どう頑張ろうとしても、翔吾くんとの将来がイメージができなかった。ずっと言えなかったけど、母親との関係のせいで、昔から結婚に対してあまりいいイメージが持てなくて……」
「だったら、今までどおり付き合うだけでもいいよ。結婚のことは、史花がイメージできるようになってからでも……」
「ごめんね……。私はもう、付き合い始めた頃と同じようには翔吾くんのことを想えない」
静かに首を横に振ると、翔吾くんが瞳を曇らせてうつむく。
肩を落として背中を丸めた翔吾くんの頼りない姿に、罪悪感でチクリと胸が痛んだけれど。それが、今の私の正直な気持ちだった。