もう一度、重なる手
「え? フミがコーヒー淹れてくれるの?」
「あ、うん。もしよかったら……、だよ。アツくんの家とは逆方向なのに、わざわざ送ってもらったし。昨日も今日も、翔吾くんとのことで随分とお世話になっちゃったから……。お礼にと思って。とは言っても、その辺で買った普通のコーヒーだし、お礼にもならないかもしれないけど……」
早口で言い訳すると、最初は私のことをぽかんとした顔で見ていたアツくんが、頬を緩めてクスリと笑う。
「ありがとう。フミがそこまで言ってくれるなら、少しだけお邪魔しようかな」
帰って欲しくないという下心はきっとアツくんに見透かされているだろうけど、まだしばらくは一緒にいられるのだと思うと嬉しい。
「じゃあ、あがって」
私はドキドキしながら、アツくんを家の中に招いた。
「座るところがビーズクッションしかないんだけど、適当にくつろいでね」
散らかっているローテーブルの上をささっと片付けてビーズクッションの形を整えると、アツくんが「ありがとう」と笑い返してくれる。