もう一度、重なる手
「そう言われてみればたしかに。一緒に暮らしてた頃もフミはたくさん本を読んでたけど、だいたい学校とか市立図書館のバーコードがついているものを読んでたね」
納得したように頷くアツくんに、そんな細かなことまでよく覚えているなと思う。
照れ臭さを誤魔化すように髪を撫でてると、アツくんが「あ、これって写真アルバム?」と本棚の一番端っこにひっそりと立ててある、文庫本より一回り大きいサイズの花柄のプラスチックのアルバムに手を伸ばした。
「あ、待って。それはだめ……!」
頻繁には手に取ることのない少し古いものだけれど、それが本棚から抜き出されそうになっていることに気付いて焦る。
慌てて止めようとすると、アツくんがアルバムの背表紙から指を離して不思議そうに振り向く。
「あ、もしかして小田くんと撮った写真でも入ってる?」
「違う。でもそこには昔の写真が入ってて、ちょっと恥ずかしいから……」
「昔ってどれくらい? 俺と一緒に暮らすよりも前? それとも、もっとあと? 一緒に暮らしてなかったときの写真が入ってるなら、見たいな」
私の言葉で、アツくんはよりアルバムの中身に興味を持ったらしい。おねだりするように首を傾げてにこりと微笑まれて、私は顔を火照らせながら首を横に振った。