もう一度、重なる手

「ううん、だめ。ほんとうに恥ずかしいし……」

「恥ずかしいって何が? 変な写真でも入ってるの?」

「そうじゃないけど」

「だったら、少しだけ見せてよ。中高生くらいの頃の写真? 思春期の頃の写真て見られるの照れ臭いよね。でも、フミだったら絶対可愛い」

「か、可愛くないよ、別に」

 アツくんの横から身を乗り出して、本棚からアルバムを抜き取る。それをどこかに隠そうと部屋の中を見回していると、アツくんが隙をついて私の手からアルバムを奪い取った。

「俺も今度、中高生のときの卒アル見せるから。これ、見せてよ」

 アツくんが、悪戯っぽく口角を引き上げる。

 普段は大人で優しいし、私が嫌がることは絶対にしないくせに。ほんのたまに、アツくんは子どもみたいな表情を見せる。そういう顔も嫌いじゃないけど、このアルバムだけはダメだ。

「アツくんが高校生のときにかっこよかったことは、わざわざ卒アル見なくてもわかってるよ。だから、それは返して」

「フミは高校生だったときの俺のこと、かっこいいって思ってくれてたんだ?」

 アツくんのからアルバムを取り返そうとすると、背の高い彼がクスッと笑って腕を上げる。

「それ、ずるい……」

 身長差では敵わない。ふふっと揶揄うように笑うアツくんを上目遣いに少し睨むと、私はそばに置いてあるベッドに乗った。

 五十センチくらいの高さがあるベッドの上からなら、私の身長もアツくんには負けない。
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