もう一度、重なる手
恥ずかしいからアツくんには絶対に見られたくなかったけど、もう遅い。
アルバムは私の顔の横でページを広げて落ちていて。隠したかったものは、アツくんにバッチリと見られてしまっている。
「見られたくなかったのって、俺たちが一緒に暮らしてたときの写真?」
私はアツくんに抑えられていないほうの手を目の上に載せて顔を隠すと頷いた。
「どうしてこれを隠す必要があったの? これ、みんなで旅行行ったときのとか、フミの運動会の写真とかでしょ。なつかくても、恥ずかしいなんてことはないんじゃ……」
「違うよ。それ見て、何にも思わない?」
顔を隠したまま訊ねると、アツくんが落ちているアルバムに手を伸ばしてページを捲る気配がする。
カサリと鳴る音を聞きながら、私は恥ずかしさにぎゅっと唇を噛んだ。
そう。アルバムの中に入れていたのは、二宮さんの家でアツくんと暮らしていたときの写真だ。
再婚した二宮さんと母の関係が良好だったのは二年弱くらいだったからあまり多くはないけれど。写真は全て、母が二宮さんと離婚することになったときに、整理せずにおかれていたものをできる限りかき集めてきたものだ。
それも、アツくんが私と一緒に写っているものだけを厳選して。