もう一度、重なる手
翔吾くんと付き合っているとき彼の自分への執着の強さに怯えたけれど、離れ離れになってから十四年間ものあいだずっと、アツくんとの写真を本棚の端にひっそりと忍ばせていたなんて。私の執着心だって、たいがいだ。
「勘違いかもしれないけど、フミと俺が写ってるのが多いのかな……」
しばらくアルバムのページを捲っていたアツくんが、自信なさそうに訊いてくる。
「勘違いじゃないよ。お母さんと二宮さんが離婚したあとも、アツくんとの思い出がずっと私のお守りだった」
「フミ……」
アツくんが、目の上にあてた私の手に触れる。
顔が熱い。手のひらで覆った瞼まで熱い。
アツくんが私の手を退けようとするけれど、今この状況で彼の顔を見るのは無理だった。
「好きだった。子どものときからずっと……」
ずっと秘めてきた想いが音となって、震える唇から溢れる。
「翔吾くんと別れたばかりでこんなこと言って、軽いって思われるかもしれないけど……。でも、今も好き。アツくんが好き」
言葉とともに、ふぅーっと熱い息が漏れた。
長年溜め込んできた想いを伝えられた安堵と、振られて、せっかく再会できたアツくんと気まずくなったらどうしようと焦燥。相反する二つの感情が交互に主張してきて、心臓がドキドキと鳴る。