もう一度、重なる手
瞼に手を載せたままアツくんからの反応を待っていると、「フミ」と優しい声音で呼ばれた。
ドキッとして肩を揺らす私に、アツくんが甘く優しい声で呼びかけてくる。
「フミ、顔見せて」
ゆるゆると頭を振ると、瞼の上に置いた手に柔らかな温もりがそっと触れた。
ほんの少し湿り気のあるそれは、アツくんの唇で。上に向けた手のひらに、ひとつ、ふたつとキスを落とされて、ジッとしていられなくなる。
「だめ、くすぐったい……」
指を動かしてアツくんの唇を退けようとすると、その手をぎゅっと握り込まれて、目の上から外される。
「やっと顔見せてくれた」
視界が開けた瞬間、鼻先が今にも触れ合いそうなほどの距離でアツくんが優しく目を細める。
ドキンとして顔を逸らそうとする私をアツくんが「フミ」と柔らかな声で制する。
「フミの気持ち、嬉しいよ。俺も離れてた十四年間、一度もフミを忘れたことはなかったから」
「ウソ……」
「本当だよ」
「でも、今も昔もアツくんが私に構ってくれるのは、《妹》だからでしょう」
切ない気持ちで見上げると、アツくんが困ったように眉尻を下げた。
「どうだろうね」
ぼそりとつぶやいたアツくんが、私の髪に触れて指で梳く。