もう一度、重なる手

◇◇◇

 明け方。肌寒さに寝ぼけながらブランケットを胸元まで引き上げようとした私は、横顔に視線を感じて目を開けた。

 ぼんやりとした視界に映るのは、口角を上げてうっすらと微笑むアツくんの姿で。一瞬前までぽやんとしていた脳みそが、一気に覚醒する。

「おはよう、フミ」

「お、おはよう……!」

 外はまだほんの少し薄暗くて、カーテンの隙間からは太陽の光も差し込んでいないのに、私の隣で寝転ぶアツくんの顔がやけに眩しい。

 直視すると、眩しさに目がやられそうだ。

 ブランケットを頭の上まで引っ張り上げて顔を隠すと、「フミ?」とアツくんが肩を揺すってくる。

「フーミ、出てきて?」

 あやすような声で呼ばれて、ブランケットからチラッと頭と目だけを出すと、アツくんがふっと吹き出した。

「何してるの?」

「だってアツくん、人の寝顔見てたでしょ。いつから起きてたの?」

「三十分くらい前かな」

「そんなに見られてたの? 起こしてくれたらよかったのに……」

 ブランケットの下に隠した頬をむっと膨らませると、アツくんがそれすら見抜いているかのようにククッと笑う。

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