もう一度、重なる手

「なんで今さら照れてるの。もう二度と離れたくないんでしょ」

 耳元で揶揄われて肩越しに少し振り向いて睨むと、アツくんが私の顎をつかんで口付ける。

「好きだよ」

 キスで力の抜けた身体を、アツくんに仰向けに返される。

 昨夜想いを伝えたときは、私の言葉を驚いた顔で受け止めていたアツくんだったけど。やっぱりアツくんは私の考えなど全てお見通しで。私の宥め方も機嫌の取り方もよく心得ている。

 髪を撫でられて、アツくんの手の心地よさに目を閉じる。

 いつのまにかふたたび微睡かけた私の唇に、今朝二度目のキスがそっと落ちてきた。

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