もう一度、重なる手
子どもの頃、私にあまり関心のなかった母に褒められた経験が少ないせいか、アツくんに笑って褒めてくれると私の心は幸福感に満たされる。
「また何か作るね」
プリンの容器を片付けるとき、つい調子にのってそう言うと、アツくんが私を引き寄せてキスしてくれた。
「楽しみにしてる」
唇を離したあと、至近距離で微笑まれて心臓がドキンと鳴る。
そんなふうに言われたら、来週末も何か作るしかない。
アツくんに気に入ってもらえそうな、新しいレシピを調べておかなくちゃ。
私は少しそわそわとした気持ちで、空になったコーヒーカップとプリンの容器をシンクに運んだ。