もう一度、重なる手
11.深愛

「ひさしぶりだね、史ちゃん」

 待ち合わせ場所をしたホテルのカフェに向かうと、先に着いていた二宮さんが私とアツくんに笑顔で手を振ってきた。

「おひさしぶりです」

 アツくんの隣で少しかしこまって頭を下げると、二宮さんが嬉しそうに顔を綻ばせる。

「小学生だった史ちゃんが、いつのまにか大きくなってこんなに綺麗になってるなんてね。侑弘から史ちゃんに再会したって聞いたときは驚いたけど、まさかこんなかたちで紹介してもらえることになるとは思わなかったよ」

「私も、またお会いできてほんとうに嬉しいです」

 私に笑返す二宮さん目尻に、いくつか細いシワが寄る。

 十四年ぶりに会う二宮さん――、アツくんのお父さんは、記憶の中よりも少し歳をとっていたけれど、柔和な笑顔も、醸し出す優しい雰囲気も変わらない。笑顔を向けられただけで、私まで和やかな気持ちになる。

 アツくんから「一緒に住もう」と提案された二週間後の日曜日。アツくんからの提案で、私は二宮さんと会うことになった。

 アツくんから「フミと一緒に暮らす前に、ちゃんと紹介しておきたい」と言われて、私は二つ返事で頷いた。

 改まって紹介されるような仲でもないのだけど、前々から二宮さんが私に会いたがっていることは聞いていたし、私も一緒に暮らしているとき良くしてくれた二宮さんに会いたかった。

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