もう一度、重なる手
二宮さんとふたりで微笑み合っていると、アツくんが横から私の手をスッととる。
「とりあえず、中に入って座ろうか」
アツくんがそう言うと、二宮さんが周囲をくるりと見回してから首を傾げた。
「今日は梨花さんも来るんだよね」
梨花というのは、私の実の母の名前だ。
母の名前に表情を曇らせた私を、二宮さんが心配そうな顔でも見てくる。
「もしかして、来られなくなったのかな?」
「いえ。朝寝坊して、出かける準備が間に合わなかったみたいで……。十五分くらい遅れるそうです」
「なるほど、梨花さんらしいね」
ため息交じりに首を横に振ると、二宮さんが苦笑いした。
十四年ぶりの再会に堂々と遅れてくる母のことを『らしい』と語る二宮さんが、眉尻を下げて複雑そうな表情を浮かべる。
そんな二宮さんに申し訳なくて、私は「ごめんなさい……」と頭を下げた。
「史ちゃんが気にすることじゃないよ」
二宮さんが顔の前で小さく手を振る。
それでも、私は二宮さんに対する申し訳なさを拭えなかった。