もう一度、重なる手
今日の集まりに、私の母にも来てもらったら……?、と提案してくれたのは二宮さんだ。
『侑弘が将来を見据えて史ちゃんと一緒に暮らすなら、侑弘の親として梨花さんにきちんとご挨拶をしておいたほうがいいね。梨花さんにとって史ちゃんは、たったひとりの娘さんだし』
二宮さんは、私と母のことを思ってそんなふうに言ってくれたらしい。
本来であれば結婚期間中に不貞をはたらいた元妻になんて二度と会いたくないだろうし、その連れ子と自分の息子の付き合いを反対したっておかしくないのに。私とアツくんのことを一番に考えてくれる二宮さんはほんとうに優しい。
それに引き換え私の母は……。
アツくんと再会したことや、彼と一緒に暮らそうと思っていることを話すと、「侑弘くんもやっぱりお医者さんになってるの?」とか、「二宮くんの病院は、将来的に侑弘くんが継ぐのかしら?」とか。目を輝かせながら打算的なことばかり聞いてきた。
数ヶ月前に同棲していた恋人・山本さんと別れてから、母にはまだ新しい彼氏ができていない。
最近近所のスーパーで週に三回品出しの仕事を始めたらしいが、朝が早くてキツいとか、職場の人と合わないとか、何かと文句を言っている。