もう一度、重なる手
私がアツくんと付き合っていることを知った母は、「このまま史花が侑弘くんと結婚でもしてくれたら安泰だわ」なんて言って笑っていて。
私とアツくんが一緒に暮らし始めたら、私に経済的な支援を頼もうとしていることが見え見えだった。
自分の母親ながら、うんざりする。
十四年前から、私の母は見た目はともかく内面的なところは何も変わっていない。
母のことを考えて暗い気持ちになっていると、アツくんが「フミ」と私の手をひいた。
「フミのお母さんが来るまで、中に入って何か飲んでいよう。ここのカフェのコーヒー、おいしくておすすめだよ」
私が暗い表情を浮かべる原因がなにか、察しのよいアツくんには気付かれているのだろう。笑顔で私の気を紛らわそうとしてくれる。
「史ちゃん、ケーキも食べていいよ。今日は僕の奢りだから」
二宮さんにまで優しく気遣われて、私はますます申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
せっかくひさしぶりに二宮さんと会えたのに。
今日は、アツくんと一緒に暮らすための明るい話をする日なのに。
暗い顔でいてはよくない。
「ケーキ、お言葉に甘えていただこうかな」
小さく笑顔を見せると、二宮さんとアツくんがほっとしたように笑い返してくれた。