もう一度、重なる手
「まさか、侑弘と史ちゃんが再会して、こんなふうになるとは思わなかった」
「私も、史花から話を聞いてびっくりしたの。史花って昔から、恋愛関係のことは私に全く教えてくれないから。それにしても侑弘くん、しばらく会わないあいだに立派になったわね」
「それを言うなら、史ちゃんのほうこそ。すごく綺麗になっててびっくりしたよ」
「ありがとう」
母が私にちらっと視線を向けて微笑む。普段は、口を開けば誰かの愚痴や日常生活、仕事先での不満を零している母。そんな母が、今日はいつになく機嫌がいい。機嫌が良すぎて、少し気持ち悪いくらいだ。
調子にのって、アツくんや二宮さんを不快にするようなことを言いださなければいいけど。
隣に座る母の言動が気になりすぎて、そわそわとする。
さっきまでは和やかな気持ちでアツくんや二宮さんと会話ができていたのに、母の登場で私の緊張感が一気に高まった。
「梨花さんは、侑弘と史ちゃんが将来的なことも考えて一緒に住む話を進めていることを聞いてる? 僕のほうは、ふたりの同居に異論はないけど、梨花さんはどうかな」
「私ももちろん異論はないです。将来的なことも考えてってことは、侑弘くんは史花との結婚してくれるつもりなのよね?」
母が二宮さんからアツくんに視線を移し、その反応を窺うようにジッと見る。母の目を真顔で数秒見つめ返したアツくんは、すぐに笑顔を作った。