もう一度、重なる手
母がアツくんや二宮さんに失礼なことを言わないか、そればかりが気がかりだったけれど、この調子ならあまり心配しなくても大丈夫なのかもしれない。
母の隣で、静かに胸をなでおろす。だが、その直後。
「これからなら、四人で暮らせるところにするのはどう?」
母が突然、思ってもみなかった言葉を口にした。
「四人?」
顔を引き攣らせながら隣を見ると、母がとても楽しそうな顔で微笑んでいる。
「そうよ。史花と侑弘くんが結婚すれば、私もふたりの家族でしょ。それに二宮くんも」
母の発言に、頬がピクリと震える。
「それはつまり、お母さんは二宮さんと再婚し直したいと思ってるってこと?」
私の問いかけに、アツくんも顔を引き攣らせ、二宮さんが微妙そうに眉をひそめた。
「そういうわけじゃないけど、史花と侑弘くんが家族になって、またみんなで昔みたいに暮らせたら楽しそうだなって思ったのよ」
笑顔で無茶苦茶な発言をする母に、心の底から怒りが湧いた。そして、さっき母が『らしくない』行動をとった意味にようやく気付く。