もう一度、重なる手
◇◇◇
カフェを出たあと、私とアツくんは二宮さんとまたゆっくりと食事をする約束をして別れた。
「行こう、フミ」
ホテルの最寄りの駅へと歩いていく二宮さんに手を振ると、アツくんがエントランス前のタクシー乗り場のほうに私を引っ張っていく。
カフェを出る前に繋がれた手は、そのあとも離れることなく重なったまま。私をつれて早足で歩くアツくんは、なんだか少し焦っているみたいだった。
「帰りはタクシーにするの?」
「そのほうが早いから」
特に急ぎの用があるわけでもないはずなのに。
アツくんが私の手を繋いだまま、乗り場に停車していたタクシーに乗り込む。
アツくんが少し早口で自宅の住所を告げると、タクシーはすぐに発進した。
三十分ほどでアツくんのマンションに到着すると、彼が強い力でグイグイと私を引っ張っていく。
「アツくん、どうしたの……?」
部屋の前でアツくんの背中に訊ねると、玄関のドアを開けた彼が私を中に引き摺り込んで、普段より少し荒っぽく腕のなかに閉じ込める。
狭い玄関で突然にぎゅーっと力任せに抱きしめられて、驚くと同時に戸惑った。