もう一度、重なる手
もう一度、重なる手
中学生のとき、歳の離れた妹ができた。
俺が小学生のときに母親が病気で死んで以来、色恋沙汰の全くなかった父親が、突然に再婚相手を連れてきたのだ。
父の再婚相手は、高校の同窓会で再会した同級生で、実年齢よりも五つは若く見える美人だった。
梨花さんという名前の彼女には、小学生になったばかりの子どもがいた。それが、フミだ。
最初は小学生の妹なんて、わがままで自分勝手で面倒くさいに違いないと思っていたけれど、フミはとても落ち着いていて、わがままでも自分勝手でもなかった。
特にフミは人見知りが強くておとなしく、何をするにもまず、大人の顔色を慎重に窺っていた。
実の母親である梨花さんにも、なるべく我儘を言わないようにと毎日気を遣っているふうだった。
人の顔色を窺うばかりで、ほんとうに欲しいものを選べない。自分のほんとうにしたいことを主張できない。俺はそんなフミのことが気になった。
家族になったのなら、せめて兄である俺の前でくらいはリラックスできるように。
そう思って、遊びに連れて行ったり、一緒にゲームをしたりして、懐いてもらえるように努力した。
その成果もあってか、フミは俺の前ではよく笑うようになったし、気を遣わずに話をしてくれるようになった。