もう一度、重なる手


 ひさしぶりに会った梨花さんは昔よりも老けていたけれど、それでもやっぱり実年齢よりも若く見えて綺麗だった。

 大きくてパッチリとした目が、フミと似ている。

 だけど、あけすけな性格や少し高慢な物言いは、おっとりしているフミとは全く似ていなかった。

 俺とフミが、将来的なことも見据えて同棲を考えていることを伝えると、梨花さんは俺たちにとんでもない提案をしてきた。

「史花と侑弘くんが家族になって、またみんなで昔みたいに暮らせたら楽しそうだなって思ったのよ」

 父と結婚しているときから身勝手なことばかりしていた梨花さんは、十四年ぶりに会ってもその本質を全く変えていなかった。

 もともと、家族として暮らしていた俺たち四人の生活を壊したのは梨花さんだ。

 それなのに、『またみんなで暮らせたら』なんて、そんな話、俺や父が簡単に受け入れられるはずがない。

 梨花さんの自分勝手な発言に、普段は温厚な父が珍しく本気でキレていた。

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