もう一度、重なる手
父にキレられた梨花さんは驚いて放心状態になっていて、その隣でフミも戸惑いの表情を浮かべていた。
父と梨花さんの争いに巻き込まれて戸惑うフミの顔が、十四年前の小学生だったフミと重なる。
その瞬間、フミがまた俺から離れていってしまうのではないかと不安になった。
もう、十四年前のように後悔はしたくない。今度は絶対に、フミのことを手放したくなかった。
「おいで、フミ」
俺はフミに手を差し伸べると、優しい声で呼びかけた。
けれど、俺の必死の声が届かないのか、フミは梨花さんのことを心許なげに見つめてぼんやりとしている。
そのまま、梨花さんのほうに手を伸ばそうとするフミを見て、心臓がキリキリと痛くなった。
俺はまた、フミに選んでもらえないんだろうか……。
フミを守りたいと思うのも、ずっとそばにいてほしいと思うのも、結局は俺の独りよがりな願望で。
梨花さんみたいな母親でも、やっぱり血の繋がりには敵わないのだろうか。
悔しくて、歯痒くて仕方ない。
それでも、十四年前のように、何もせずに諦めるつもりはない。
俺にできるのは、フミに手を差し伸べて、彼女の名前を呼び続けること。ただそれだけ。