もう一度、重なる手
 

 もしかしたら、拒絶されることも覚悟のうえで、梨花さんのほうに伸ばそうとしているフミの手を少し強引につかまえる。
 
「フミ」

 切羽詰まった声で呼びかけると、フミがハッとしたように俺を見た。

 ただ、必死だった。フミを失いたくなかった。

 昔も今も、フミは俺にとっていちばん大切な存在だから。

「おいで……」

 フミ。頼むから、俺の手をとって。今度こそ、君の意志で俺を選んで。

 そうすれば、重なるその手をあの日の小さな君と一緒に握りしめて。

 もう二度と離さないから――。


Fin.
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