もう一度、重なる手
強火にかけた大鍋の中で、沸騰したお湯がブクブクと泡立っている。コンロの火を緩めると、私は少し無理やり笑顔を作った。
「わかった。再来週の日曜日、空けとくね」
私の言葉に、翔吾くんがほっとしたように頬を緩める。
「ありがとう」
嬉しそうな翔吾くんに、私はやっぱり少し無理した笑顔しか返すことができなくて。そのことに、小さな罪悪感を覚えた。
「大好きだよ、史花」
調理台に置いたパスタを手に取ろうとする私の背中を翔吾くんがぎゅっと強く抱きしめてくる。
「うん、私も」
好きだった。好きだと思っていた。
翔吾くんの甘えるような声に頷きながら、はたして私の想いは彼の想いと同じ重さで釣り合っているのだろうかと頭の隅で思う。
そして、首筋に翔吾くんの唇の熱を受けながら、冷静にそんなことを考えてしまっている自分にぞっとした。