もう一度、重なる手
ミルクティーをまた一口啜ったとき、テーブルの上に置いていたスマホが震える。翔吾くんからのラインだ。
〈来週の日曜日、うちの両親も史花に会えるのを楽しみにしてるって。〉
そんなメッセージに、さらに気分が沈み、ため息がこぼれる。
そのとき、「フミ」と名前を呼ばれた。その呼び方で、アツくんだとすぐにわかった。
十四年も会わずにいたのに、アツくんの声は今も私の耳によく馴染むのだ。
「休憩に出ようとしたら、入口からフミの姿が見えたから。今からお昼なら、一緒にいい?」
「もちろん」
これまで同じビルで働いていても全く会えなかったのに。一度の偶然が、二度目の偶然を呼び寄せてくれたらしい。
アツくんと次に会えるのは、本を貸すときかなと思っていたから、翔吾くんのことで沈んでいた気持ちが少しだけ浮上した。
「食べるもの注文してくるから、ちょっと待ってて。というか、フミの昼ごはん、それだけ?」
ミルクティーしか注文していない私を見下ろしてアツくんが顔を顰める。
「あ、うん。最近暑くなってきたからかな。特に今日はあんまり食欲なくて」
暑いのは苦手だ。特に、湿度を多く含んだ咽せ返るような夏の暑さは。
ハハッと誤魔化すように笑うと、アツくんが眉根を寄せたまま腕を組んだ。