もう一度、重なる手
「そう?」
恥ずかしさで頬を熱らせながらブンブンと首を左右に振ると、そんな私を不思議そうに眺めながら、アツくんがこちらに向けていたスプーンを自分の口に運ぶ。
「ところでさ」
ミルクティーのカップを両手で包んで持ち上げ、火照りのおさまらない頬を隠していると、アツくんがアイスコーヒーのグラスに手を伸ばした。
「なんだか元気がないみたいだったけど、悩み事?」
「え?」
不意打ちの質問にドキッとする。動揺を隠しきれない私の顔を、アツくんがアイスコーヒーを飲みながら上目遣いにジッと見てきた。
「なにか困ってることがあるなら聞くよ」
「別に、困ってることなんてないよ」
「そう? でも気付いてる? 昔からフミは、なにか困ったことが起きると手元の本に集中できなくなるんだよ。この本、昼休みに続きを読む予定だったのに、考え事に邪魔されて読めないんでしょ」
「どうして……」
まさに、アツくんの指摘されたとおりだったから驚いてしまう。