もう一度、重なる手

 そういえばアツくんは、私が嫌なことや心配なことがあって落ち込んでいると、誰よりも先に気付いてくれていた。

 あの頃は、一緒に暮らしていたから私の感情の機微にも気付きやすかったのだと思うけど。何年も離れていたのに、私の気持ちに気付いてしまうアツくんは人の心でも読めるのだろうか。

「俺にはあまり話したくないこと?」

 困ってうつむくと、アツくんが優しい声で訊ねてくる。

「そういうわけじゃないけど、私の個人的な問題だから……」 

「そっか。フミももう子どもじゃないし、ひとりで考えたい悩み事もあるよね」

 顔をあげると、アツくんが淋しそうな目をして微笑んだ。アツくんにそんな顔をさせてしまったことに、なぜか少し罪悪感を感じてしまう。

「ごめん……」

 つい謝ると、アツくんが首を傾げながらわたしの頭をぽんっと優しく撫でてきた。

「なんで謝るの? 別にいいんだよ、そんなの。あ、そういえばさ。昨日、フミに再会したことを父さんに話したら、すごく驚いて羨ましがってたよ」

 アツくんが私の頭から手を離しながら、話題を変える。

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