もう一度、重なる手

「父さんも、またフミに会いたいって。父さん、フミのこと本当の娘みたいに可愛がってたからなぁ」

 アツくんのことだから、敢えてさりげなく話題を変えてくれたんだろう。その気遣いに、ほっとした。

 いくらアツくんがほんとうのお兄さんみたいな存在でも、「付き合っている彼氏の両親と会うことが決まって気が重い」なんてことまでは話せない。

「私も二宮さんに会いたいな。時間があるときに会いましょうって伝えといて。土日はだいたい空いてるから」

「伝えとく。父さんも喜ぶよ」

 翔吾くんに週末の予定を聞かれたときは忙しいと散々渋ったくせに、相手がアツくんだとスケジュールが簡単に空けられるなんて。そういうのはずるいだろうか。

 でも、アツくんも二宮さんも私にとっては家族みたいなものだから。自然と優先度が高くなっても仕方がない。

 アツくんが大盛りのチキンカツカレーを平らげるまでの二十分間、私たちは他愛のないことをたくさん話した。

「私、そろそろ戻らなきゃ」

 先にカフェで休憩をとっていた私が、アツくんよりも先に立ち上がる。

「じゃあね」

 カバンを肩にかけて、ミルクティーのカップを返却口に持って行こうとすると、「フミ」とアツくんが呼び止めてきた。

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