もう一度、重なる手
「ご、ごめん。家に着いたあと、すぐにお母さんから電話がかかってきてて」
翔吾くんに疑われていると思った私は、咄嗟に嘘をついてしまった。
「お母さん?」
「そう。さっき、お母さんに頼まれて必要なものを一週間分まとめて買い物してきたんだけど、私が片付けた場所がいつもの置き場所と違ってわからなかったみたいで……。それで」
私の口から、自分でも恐ろしいくらいの嘘の言い訳がするすると出てくる。けれど内心はとてもドキドキしていて、嘘が見抜かれてしまわないか気が気ではなかった。
「ふーん、それならいいけど」
低い声でつぶやいた翔吾くんが、私の嘘をほんとうに信じてくれているかどうかはわからない。
「せっかく持ってきたし、寿司食べる?」
「あ、うん……」
翔吾くんが、食卓の上でお寿司の皿を包んでいた風呂敷を広げる。
翔吾くんのご両親が頼んでくれたお寿司は、ネタが大きく豪勢だった。それを、翔吾くんとふたりで食卓で向き合って食べる。