もう一度、重なる手
「そういえば、昨日はあのあと大丈夫だった?」
「あのあと?」
「そんな反応するってことは、大丈夫だったのかな」
ぽかんと首を傾げると、アツくんが、ふっと目を細めて笑う。
「いや、昨日の夕方に俺と電話してたとき、フミ、来客だからって電話を切ったでしょ。なんか声が慌ててる感じだったから気になって」
アツくんが気にしているのは、私が翔吾くんの訪問に焦って変な感じで電話を切ったからだ。
「うん、大丈夫。実は昨日、ほんとうは彼氏の実家に挨拶に行く予定にしてたの。だけど、お母さんのことでドタキャンしちゃったから……。彼氏が心配して様子を見に来てくれてて……」
電話の声ですら私の様子がおかしいことに気付いてしまうアツくんに、ヘタなウソはつけない。そう思ったから、昨日のことを正直に話したら、アツくんが驚いたように目を見開いた。
「そんな大事な日だったんだ。でも、挨拶ってことは……。フミ、今付き合ってる人とそろそろ結婚するの?」
アツくんに訊ねられて、胸がズキンと息苦しくなった。