もう一度、重なる手
「そうだといいんだけど……」
「ほかにも何か不安があるの?」
浮かない表情の私に、アツくんがもう一歩踏み込んでくる。それで、つい、翔吾くんには言えない本音が漏れた。
「不安だらけだよ……。私は、小さい頃からパートナーを取っ替え引っ替えしてる母親しか見てきてない。そんな私が、ひとりの人とちゃんと結婚生活を続けていけるのか不安だし、自分がお母さんみたいな人にならないかも心配……」
「フミは大丈夫だよ」
「ううん、大丈夫なんて保証はないよ。私にはお母さんの血が流れてるから。同じようになっちゃうかもしれない……」
翔吾くんに結婚を仄めかされてから前向きな気持ちになれずにいるのは、その要因が大きい。
翔吾くんの恋人でいるあいだはなんの不安もなかった。彼と過ごす時間は楽しくて、それなりに幸せだった。
だけど私は彼の妻になれる自信がないし、彼と一緒にふつうの結婚生活を送っていく自信もない。
テーブルの上で軽く結んでいた手に、アツくんが手を重ねてくる。アツくんの大きな手に包まれて初めて、私は自分が少し震えていたことに気が付いた。