もう一度、重なる手

 母に頼まれた全ての用事を済ませた頃には、時刻は13時半を回っていた。

「ごめん、もう行く」

「なに? 午後から用事でもあったの?」

「ちょっと……」

 適当に濁して出ようとしたら、母が上から下まで私の全身をじろじろと見てきた。

「そういえば、うちに家事をしに来たにしては他所行きの格好してるわね。男の子とでも会うの?」

「そういうわけじゃ……」

「ふーん。まあ、付き合う相手はよく選びなさいよ。史花はおっとりしてて騙されやすそうだから。しっかりした会社で働いてて安定した収入があるか、ちゃんと見極めないと」

 やや上から目線で諭してくる母に、私は心の中でため息を吐いた。

 付き合う相手を選べなんて……。母にだけは言われたくない。

 だけど、ムダな争いはしたくないから「わかった」とだけ短く答えて家を出た。

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