もう一度、重なる手

 翔吾くんに手を引かれてホテルの立派な入口に足を踏み入れると、絨毯張りの大階段と豪華なシャンデリアのあるクラシカルな内装のロビーに出迎えられる。

 思ったよりも高級感のあるホテルの雰囲気に少し緊張しながらロビーラウンジに向かうと、入り口の前に立っていたアツくんが私に気付いて手を振ってきた。

「フミ」

 目を細めて笑いかけてきたアツくんは、ライトグレーのパンツに黒っぽいジャケットを合わせたカジュアル目なドレスコード。再会してからは白衣姿やラフな私服姿のアツくんしか見ていなかったから、きちんとした綺麗目な格好をしているアツくんの姿がなんだか新鮮だった。

 笑顔のアツくんに数秒見惚れていると、翔吾くんが私と繋いだ手をぐっと引っ張る。

 ハッと我に返った私は、アツくんの前で緩みかけていた表情を引き締めた。

 今日はアツくんとの関係が潔白であることを翔吾くんにわかってもらうためにふたりを引き合わせるのに。少しでも疑われるような態度をとったら意味がない。

「アツくん、こちらが小田翔吾くん。翔吾くん、こっちが私の兄……、の二宮敦弘さん」

 アツくんと翔吾くん、ふたりの顔を交互に見ながら名前を紹介すると、翔吾くんが私の手を握ったままアツくんの前に一歩進み出た。
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