もう一度、重なる手
「はじめまして。史花から、お話はうかがってます。彼女とお付き合いさせてもらっている小田です」
アツくんに向かって頭を下げる翔吾くんは、にこやかで愛想がよかった。けれど、そうしている間も私の手だけは絶対に離そうとしない。
翔吾くんの子どもみたいな牽制を少し恥ずかしく思っていると、アツくんがふっと笑った。
「はじめまして。二宮です。僕のほうこそ、フミからお話うかがってます。実の妹みたいなフミに恋人を紹介してもらえる日が来るとは思ってなかったから、今日はお会いできて嬉しいです。席予約してるから、中で少しお話ししようか?」
アツくんは、翔吾くんの無言の牽制に気付いていたと思う。それに気付いていても、アツくんの態度はおとなでとても優しかった。
アツくんの反応を見て、ようやく私たちの関係にやましいことがないと感じたのか、私の手を握る翔吾くんの力が緩む。
なんとか、大丈夫そう……?
先にラウンジの中へと入っていくアツくんの背中を負いながら、私はようやく一息つけた気分だった。