もう一度、重なる手

「史花がもう二度とあの人に会わないって約束できるなら、今回の裏切りには目をつぶってあげるよ。だけど、もし約束を破ったら……。史花を俺だけが手に届く場所に閉じ込めるかも」

 低い声でゆっくりと話す翔吾くんは、本気の目をしていた。

 閉じ込めるってどういうこと……? 監禁とかそういう……。

 わずかな狂気を孕んだ翔吾くんの瞳に、背筋が震える。

 どうして、こんなことになっているんだろう。

 付き合い始めた頃の翔吾くんは、こんなふうではなかったはずなのに。私が彼を変えてしまったのだろうか。

 翔吾くんから薄らと見え隠れする狂気に怯える私に、彼が不適な笑みを浮かべた顔を近付けてくる。

 ちゅっ、とリップ音をたてて触れた翔吾くんの唇は、いつもより少し温度が低かった。

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