もう一度、重なる手
「史ちゃん、どうかしたの? 体調でも悪い?」
翔吾くんの横顔を見つめて立ちすくんでいると、由紀恵さんが不思議そうに首を傾げる。
「いえ。大丈夫です……。暑さのせいかな。私、夏って苦手で……」
ハハッと笑ってみせたけれど、左目の瞼が細かく痙攣していた。
そう。暑い季節は苦手なのだ。昔から……。
「体調悪いなら、無理せず言ってね」
「ありがとうございます」
左のこめかみをそっと押さえながらデスクに向かおうとすると、通りすがりに翔吾くんがボソリとささやく。
「体調大丈夫? 夜、様子見に行くよ」
優しげな声に、ゾクリと背筋が凍る。振り向くと、翔吾くんが由紀恵さんに気付かれない程度に、ゆるりと口端を引き上げた。
私を真っ直ぐに捉える翔吾くんの双眸。
逃れることはできない、と。本能的にそう思った。