もう一度、重なる手
「フミ? 大丈夫?」
震える唇をぎゅっと噛み締めると、アツくんが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「どうしたの? もしかして、具合でも悪い?」
「へ、平気。私、もう行くね……」
「あ、ちょっとフミ!」
アツくんの手を振り払って駆け出そうとすると、急に眩暈がして足元がふらついた。
ああ、どうしよう。こんなときに、貧血かも……。
「フミ?」
ぐらりと揺れた私の身体をアツくんが抱きとめる。
「大丈夫? 貧血だよね。声をかける前から顔色悪かったけど、ちゃんとごはん食べてる? 最後に会ったときより痩せてない?」
私のことを心配してくれているのか、アツくんが矢継ぎ早に話しかけてくる。
アツくんの優しさが嬉しい。だけど私は、どこで監視しているかわからない翔吾くんの目が気になって仕方なかった。
「ありがとう。最近暑いから、ちょっと夏バテなのかも……。でも、平気だから……」
「平気じゃないよ。俺が今手を離したら、絶対にどこかで倒れる。今昼休みだよね? うちのクリニックで点滴できるから、行こう」
「そんなのいいよ。ちょっとふらつくのなんて、よくあることだし」
「よくあること? だったら、なおさら見過ごせないんだけど」
振り切って逃げようとすると、いつもは優しいアツくんが珍しく怖い顔で私を見下ろしてきた。この顔は、たぶん怒っている。