もう一度、重なる手

 アツくんが怒るのは、昔から私が我慢して意地を張るとき。

 小学生の頃、熱があるのに無理して学校へ行って倒れたときも「変なところで我慢しちゃだめだよ」とアツくんに厳しく諭された。

 あのときの私は、我慢したわけじゃなくて、子どもながらに二宮さんやアツくんに余計な心配をかけたくないと思って体調不良を打ち明けれなかった。

 今も、小学生のときと同じだ。ただの貧血で、アツくんに余計な心配をかけたくない。それに、翔吾くんのこともある。

 私の昼休みの時間をだいたい把握している翔吾くんが、いつラインをしてくるかわからない。それにちゃんと返信をしなかったら、翔吾くんは機嫌が悪くなる。

「アツくん、私、ほんとうに大丈夫だから。もし何かあれば、ちゃんと連絡するし、病院にも行くし」

 私がそう言うと、アツくんがうんざりしたようにため息を吐いた。

「そう言って、フミは全然連絡くれないよね?」

「そんなことないよ」

「そんなことあるよ。本を返したいって言ってるのに、もう何週間も連絡がないし。もしかして避けられてるのかなってちょっと思ってたんだけど……」

「まさか……」

 ドキッとして頬を引き攣らせると、アツくんが私を見つめて「ふーん」と頷く。

「わかった。言うこと聞かない子は、強制連行」

 そう言ったかと思うと、アツくんが私の背中と膝の裏に手を回して軽々ひょいっと抱き上げた。

< 93 / 212 >

この作品をシェア

pagetop