もう一度、重なる手
「え、ちょっ……。何?」
突然、コンビニの入り口の前で白衣のイケメンに抱き上げられた私に、周囲の注目が集まる。
これって俗に言う、お姫様抱っこでは……。
「あ、アツくん……! 見られてる。見られてる! おろして!」
慌ててジタバタしたけれど、アツくんは私が暴れてもわめいても平気な顔で、コンビニから出てエレベーターのほうに歩いていく。
「アツくん、私、ちゃんと自分で歩ける……」
顔を熱くしながら抵抗している間に、アツくんは私を抱きかかえられたままエレベーターに乗り込んでしまった。
片手で私を支えながら、アツくんが押した行き先ボタンは五階。
「あの、ほんとうにもうおろして……、ください……」
「うちのクリニックに着いたらね」
最終的に敬語でお願いしてみたけれど、アツくんはすんとした顔のまま私を抱えて立っている。
幸い、エレベーターにはほかの同乗者はいない。このまま五階までノンストップで上がってくれることを願いつつうつむいていると、エレベーターは一階で止まった。