もう一度、重なる手

 クリニックはちょうど午前と午後の診察の間の空き時間らしく、休憩をとっていた受付の女性以外に人はいなかった。

 真っ白な壁の、清潔感のある綺麗なクリニックの待合室。座らされた椅子の上で肩を縮こまらせながらそわそわとしていると、アツくんが私の前で屈んだ。

「フミ、あとどれくらい昼休みとれる?」

 奥二重の切れ長の目。アツくんに間近でじっと見上げられて、トクトクと心音が速くなる。

「三十分くらいなら……」

 待合室の受付のデジタル時計にちらっと視線を向けながらボソリと答えると、「そっか」とアツくんが私の頭をよしよしと優しく撫でてきた。

「じゃあ、職場にいちおう連絡入れといてくれる? ビルのクリニックで診察受けてから戻るって」

「え……? 私、悪いところなんて何もないけど」

 ゆるりと首を左右に振ると、アツくんが眉間を寄せて顔をしかめた。

「さっき倒れかけたでしょ」

「よくある立ち眩みだから平気」

「だから、よくあるっていうのが問題なんだって。フミ、毎日ちゃんとごはん食べてる? 今日のお昼ごはんも、どうせそれだけなんでしょ?」

 アツくんが、私のカバンからちらっと見えている飲むタイプのゼリーを指差す。
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