呼応する星たち【完】
 メリット。確かに明希にメリットは、なにもない。

 だけど、わたしと明希は友達じゃなかっただろうか。

 一年生から同じクラスで、安藤(あんどう)石井(いしい)で席が近いこともあって、軽くしゃべったり、授業ではいっしょにグループワークしたことも何度かあった。クラスでカラオケに行けば、同じバンドが好きで少し盛り上がったりもした。

 少なくとも、名前で呼び合うくらいには親しいつもりだった。
 メリットがないから、なんて理由で願いを聞き入れてもらえないとは思っていなかった。

「ここはさ、俺のお願いもきいてよ。そしたらフェアじゃん」

「お願いって……。どんな……」

「俺さ、まだあっちの経験ないんだよね」

 ぎょっとして後ずさった。(かかと)のぶつかった机がガタガタと音を立て、恐怖を揺さぶる。

「あ、もしかして小春ちゃんも経験なかった? そうだよね、シャーペン盗むくらいだもんね」

 経験どころか、彼氏がいたこともなければ、告白したことも、されたこともなかった。

 教科書の端から、ちらちらと佐野の横顔を盗み見る――それが私の日常だった。
 佐野から「おはよう」と言われたら頬が染まり、一言二言、言葉を交わせば、一日中ふわふわとしていられた。
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