この胸が痛むのは
あの時、食堂で。
俺が面白おかしく話した王女の噂を聞いて、
クラリスは下を向いて笑って……
俺にはそう見えたのに、あれは笑ってなかった?


「例の専用給餌何とかの時も、俺達が盛り上がっててもクラリスは嗤ってなかった」

「……」

「俺はそれ見て、あー、やっぱり好きだー、って思って。
 クジラって呼ばないの、王女っていつも言うよ?」

……クラリスはクジラと呼んでなかったのか。
俺はレイみたいに、いちいちクラリスがフォンティーヌを何て呼んでるかも聞いてなかった。


「俺には笑ってるように見えたんだ。
 受けてると思って、段々大袈裟になって……」

「まぁ、受けてると思ったらそうなるのはわかる。
 で、何? クラリスが怒ってる?
 あれ、通常だろ?
 あっちに行って情報を掴む、って言ってたろ?
 アシュこそ、何でピリピリしてる?」

頭に上っていた血が引いていく。
何でか?
答えはわかってる、恥ずかしかったからだ、自分が。
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