この胸が痛むのは
だが、フォンティーヌ王女にそのつもりはなかったのは明らかだし、クラリスは彼女の隣に居るし、そんなアピールはもう必要ない。

女性からダンスの申し込みなど恥を忍んで声を
かけてきたのだ。
誰にも声をかけられない俺に、こうして来てくれたのだから、1曲くらいなら、と思った。


「殿下、お迎えに参りました」

ゴージャスとセクシーの二人組の後ろからクラリスが現れた。
彼女の登場にふたりは顔を見合わせて、俺達に
かけてきた声色とは違う声を出した。


「こちらの用が済むまで……」

セクシーの黒髪令嬢の言葉を遮って、ふたりの事など見もせずに、クラリスが続ける。


「王太子殿下がこちらにお顔をお見せするように、と仰せです」

王太子殿下が、の言葉は威力絶大だ。
ゴージャスとセクシーは慌てて退いた。 

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