この胸が痛むのは
王太子殿下が来いと言ってるのか?」

王太子が待つという例のフォンティーヌを囲む
集団の所へ行く。
もちろんレイも一緒だ。


「アシュフォード殿下がいらっしゃらないと、
皆様気にされていますわ。
 それに……」

「……」

「リヨンの王太子がフォンティーヌ殿下を騙したようです」

「騙した?」

「王女殿下は名指しでバロウズ王国から招待された、と王太子から聞かされて命じられて、来られたのに。
 それなのに、こちらに来てから、遠回しに押し掛けて来たようにマーシャル伯爵夫人から言われたそうですわ」

思わず、クラリスの腕を掴んだ。


「それは本当か? フォンティーヌ王女から聞いたのか?」

クラリスは頭を振り、早口で続ける。


「まさか、王女殿下が私などに話すわけありません。
 例の専属給餌なんて言う失礼な肩書きを付けられた、王女殿下のご友人から聞いたのです。
 マーシャル夫人もその方を使用人だと思って、当て擦りを言われたようですわ」

「……」

「あれはあまりに失礼な肩書きなので、王女殿下にはもちろんですが、ご友人方のお耳にも、入れていません。
 あの届けを王太子は目を通しているはずですから、あのように書き換えて、こちらに提出されたのでしょう」


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