この胸が痛むのは
既にベッドから起きて、少しずつ歩くようになっていました。
右手を私が支え、左手で杖をつきながらゆっくり歩く祖母とする買い物はとても楽しくて。
祖母といると、家や殿下が全部昔の事みたいで、楽に呼吸が出来たのです。


何日かして、また母がやって来て。

『いつまでもおばあ様に甘えるんじゃありません。
 学園も休み続けて、どうするの!』と、言われましたが、祖母は
『私がアグネスに甘えてるんだから。
 まだ初等部なのだから、休んだからって大したことない』と、私の味方をしてくださいました。

不満そうな母が帰っていったあと、祖母がお話をしましょう、と言ってきました。


「夜会が終わるまで、とはどうしてなのか、おばあ様に話せる?」


私の話を聞いて、馬鹿だと、祖母に呆れられないか。
クラリスの方がいいのは、当たり前じゃないの、そう祖母に諭されたら。
もう私には逃げる場所はなくなる。
そう思うと、涙がどんどん、どんどん流れました。

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