この胸が痛むのは
祖母が私を抱き締めて、背中をトントンとゆっくりのリズムで叩いてくれて、そのリズムが優しくて。


「第3王子のアシュフォード殿下が好きなの。
 だけど、殿下はお姉様がお好きなので……」


私は初めて、誰かに。
何を思うのか、聞いて貰えたのです。
自分の気持ちを話す事が出来たのです。


祖母の元にも、殿下の夜会の招待状は届いていましたが、足の怪我を理由に、直前でしたがお断りをしてくださって。
夜会が開かれていた夜は、ふたりで同じベッドに入り、色々なお話をしました。

祖母の初恋は10歳で、お相手は初等部のお友達のお兄様だったそうです。


「その御方は18歳だったから、貴女達よりは年が離れていたのよ。
 歳の離れた男性を好きになるのは、まさしく私の血筋ね?」

「おばあ様の初恋は、どうなりましたか?」

「婚約者がいらっしゃったから。
 私は単なる妹の友達だったの。
 ご結婚されたと聞いた時はいっぱい泣きましたよ」

『いっぱい泣いたら、いいのよ』

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