この胸が痛むのは
「はい、逃げても無駄。
 僕はあまり生徒の顔を覚えようとしてないけれど、記憶力はいいからね。
 君達8人の顔はちゃんと覚えたから、午後の授業中に初等部高学年の全クラス回って、ひとりひとり顔を見て、名前を確認して、指差して。
 昼休みの図書室で何をやっていたか、クラスメート全員の前でぶちまけようと思ってる」


その恐ろしい考えに、私までもが震えそうになりました。
クラスメート全員の前で?
そんな真似をされたら……学生の間だけでなく、本格的に社交界に参加しても。
それを皆は覚えている。


「そうされるのが嫌なら、こんな馬鹿な真似は金輪際しないことだ」

「全員の顔を覚えたなんて、あり得ないわ」

気丈に振る舞おうとするグレイシー伯爵令嬢に、先生は面倒くさそうに答えられました。


「そうだねぇ、そう思うなら、これからもどうぞ後輩苛めを続けたらいいよ、グレイシー嬢」

「え、どうして……」

初等部担当でない先生に家名で呼ばれて、グレイシー伯爵令嬢の顔色が変わりました。


「君の姉上、高等部2年に居るよね。
 君はそっくりだからね?」

「……」
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