この胸が痛むのは
それは、小説や舞台の題材によく使用されていて。
幼い子供達に約束を守らせる為に大人がよく口にする怪物、恐怖の対象でした。

『言うことを聞かないと、吸血鬼が拐いに来て、身体中の血が無くなるまで吸われてしまうよ』


そう言えば、吸血鬼の瞳は赤ではなかった?
先生の瞳の色が急に気になり出して、こんな誰も来ないような場所にふたりきりでいる事を改めて認識して。


「何故イシュトヴァーン・ヴラゴ王が吸血鬼なんて、云われ出したのかというと……」

「せ、先生、私もそろそろ初等部の校舎に戻らないと」

「君が僕の講義を受けたいと言ったんだよ?
 せめて触りだけでも、と思ったんだけど?
 ……そうだねぇ、心配だから君の教室まで送ろう。
 歩きながら話そうか」

得体の知れない居心地悪さに、これならもしかして王女殿下の方が分かりやすくて良かった、と
さえ思ってしまいました。

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